第80章 【チカクテトオイヨル】
洗面所の壁に寄りかかると、はぁ……っと大きくため息をついて、それから頭をワシャワシャとかき乱す。
さっきから痛いくらいに張り詰めている下腹部の緊張感……
それは1人になって意識した途端、余計にその存在を激しく主張してくる。
なんとか気を紛らわそうと、必死に筋トレでもやってみる。
だけど、腕立て伏せはダメだ、余計にその姿勢が腕の中に組み敷いた時の小宮山を思い出させて……
さっきみた、風呂上がりの小宮山の姿……
潤んだ瞳と小刻みに吐息を漏らす半開きの唇、ピンクに染まるもっちりとした肌、細くスラっとした手足……
それから、バスローブの大きく開いた胸元から溢れそうな、プルンと弾力のあるくせにすげー柔らかい胸の膨らみ……
ベッドルームへと続くドアに耳を当てて部屋の様子を伺うと、ダメだってわかってるのに、そっと音が鳴らないようにドアノブをひねる。
「……ハァ……ン……」
微かに聞こえた小宮山のため息交じりの甘い声……
ゴソゴソとシーツの擦れる音がそれをかき消した。
小宮山、やっぱ、相当辛いよな……
ひたすら我慢しているのか……、それとも、もしかしたら1人でその熱を解放しているのかもしんない……
自然と右手が下腹部へと伸びる……
少しはジチョーしろよ……、そう思ったところで止まらない、止められない……
本当だったら今すぐ飛び出していって、小宮山を抱きしめたい……
好きだって、大好きだって、この想いも欲望も、全てをぶつけてしまいたい……
今までで一番、優しくするから……
大切なものを、包み込むように、さっきのことを、全部、綺麗さっぱり忘れられるように……
だけど、それをやってしまえば、小宮山は絶望するから……
自分の意思とは関係なく、初めて知った女の快楽に溺れて、涙を流した2年前のオレのように、きっと自分自身を許せなくて、心が壊れてしまうから……