第80章 【チカクテトオイヨル】
「……ったく、派手にやってくれたな……」
倒れたテーブルを起こしながら、店長が声をかける。
泣き叫んでいた小宮山が慌てて身体を隠すから、シャツを脱いで手渡すと、ありがとうございます、そう小さい声で呟いた。
拒まれなかったことに少しだけホッとするも、小宮山をこんな目に合わせてしまったことに胸が張り裂けそうで……
ありがとうってなんだよ……
オレのせいでこんな目にあったってのにさ……
「ごめん……弁償するからさ……」
「いいさ、あいつらの給料から引いとくから」
割れたガラスの破片を集めながら店長に頭を下げると、それより、そうチラッと店長が小宮山に視線を向ける。
「……あんな直向きな子、巻き込むんじゃねーよ……んなに大切ならなおさらだ」
今更、お前を責めてもしゃーねーけどな……、そう続けた店長は、一帯を片付け終わるとカウンターに移動して、鍵を一つ取り出した。
泊まってくか、あの子、当分、動けねーぞ、そう顎で指した先の小宮山は、真っ赤な顔をして、息も上がって苦しそうで……
それは一目で、媚薬で無理やり欲情させられているのが明らかで……
確かにここで泊めてもらうのが、手っ取り早いかもしんない……
だけど……
チラッともう一度小宮山に視線を向けると、やめとく、そう言って首を横に振る。
小宮山、こんなとこなんか、もう居たくないだろうからさ……、そう続けるオレに、ま、そうだろうな、なんて言いながら店長は鍵を元に戻した。
「……あいつらを責めるのはお門違いだぞ、ここはそういう場所だ」
「……ああ、分かってる」
……分かってる、店長が言いたいことは、全てオレが原因だってこと。
こんなところに出入りして、散々、女泣かせて、好き勝手して来た報い……
『ひでー、いつか刺されんぞ?』
『平気だもんね、オレ、大抵の攻撃なら避けれるから』
それは以前、オレがここで笑いながらした会話……
こんなことになるんだったら、全部、オレに降りかかればよかったのに……
なんで、小宮山なんだよ、オレだったら、いくらだって罰を受けるのに……