第80章 【チカクテトオイヨル】
「小宮山!、小宮山は!?」
「……英二!?、うわっ、久しぶりだなー!?、もう来ないかと思ってたぞ?」
「んなことより、小宮山連れて来られてない!?」
受付カウンターにいた懐かしい顔に身を乗り出して問い詰める。
ホームに電車が着くとすぐに、ダッシュで飛び降り駆けつけたカラオケ屋……
その子か分かんないけど、確かにひとり……、そう戸惑いながら、カウンターの裏への通路を開ける。
まだそいつがドアを開けきらないうちに、勢いよくドアをこじ開け部屋へと飛び込んだ。
「小宮山っ!!」
頼むから間に合ってくれ!、そう祈るような気持ちで扉を開けたオレの目に飛び込んで来たのは、店の隅で群がるかつての仲間たち。
そして、その真ん中には、白い肌を露わにされてぐったりと横たわる女の人……
違うよな……?、頼むから……誰か、違うって言ってよ……
本当は顔なんか見えなくても、身体の一部だけですぐに分かった。
だけどそれを認めたくなくて……
でも無情にも、確認したその顔は、紛れもない小宮山本人で……
「……おまえら、小宮山に何してんだよっ!」
「お、落ち着けって、まだ挿れてねーから!!」
そう言う問題じゃねーだろ!、そう怒りに任せて小宮山を犯していた仲間の1人を思いっきり殴りつけた。
勢いよく吹っ飛びテーブルが倒れて、グラスが派手な音を立てて砕け散る。
それでも気が収まらないオレに、仲間たちは慌てて小宮山から離れると、服を着直しながら逃げて行った。
「……小宮山、ゴメン……本当に……ゴメン……」
やっぱあの時、教室でちゃんと言っておけばよかった……
ちゃんとここのこと話しておけば、小宮山がここに近づくとも無かったのに……
誰もいなくなったホールで放心状態の小宮山を抱きしめると、次から次と後悔の涙が溢れ出す。
「……イヤァァっ!」
腕の中で呆然としていた小宮山が、急に叫び声をあげてオレの身体を突き飛ばす。
まさか拒まれるなんて思わなくて、戸惑うオレに、見ないでぇ!!、そう小宮山が泣き叫ぶ。
そんな小宮山の涙を前に、すげー、情けないけれど、どうすることも出来なかった……