第79章 【ワナ】
どうしてこの人たち、私が英二くんのセフレだったって……
顔と名前も一致していたし、どこまで私のこと知られてるの……?
再度、胸に沸き起こる恐怖……
怖い……、一瞬で顔がこわばり冷や汗が溢れる。
「カシ……?、ああ、夏にナンパした可愛い子を譲ったあれ?」
「そ、あるスジから、璃音ちゃん回してもらったんだよねー」
な、何のことですか……?、恐怖で震える声を何とか振り絞り、ガタガタと立ち上がる。
カシの埋め合わせってどういうこと……?
あるスジって……?
沢山の疑問符が、なおさら恐怖に拍車をかける。
早く逃げなくちゃ……今すぐここから……
だけどすぐに男の人達に囲まれて、とても出口までなんて行けそうになくて……
「あ、あの、道を開けてください、私、帰りますから……!」
だけど、当然彼らは避けてくれるはずもなくて、ただニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら私を見下ろしている。
必死に女の人たちに視線を送って助けを求めるも、みんな何でもないような顔をして、そうなんだー、なんてサラッと流してて……
「あ、もしかして、この子?、学年首席のスゴイ相性いい子って?」
「あー……酷い捨てられ方したんだってねー?、ほーんと、英二は仕方ないんだから……」
「英二、すぐ手のひら返すからねー、あなたもたいしてヨクないって言われてたよー、身体だけのつまんない女って」
それ、本人に言っちゃうー?、そう言ってキャハハハハと甲高い笑い声をあげるその人たちに、絶対助けてもらえるはずなんかなくて……
それどころか、英二くんがここでそんな風に私のことを話してたのかと思うと悲しくて……
でも、きっと、セフレだった時だよね……そう必死に嫌な考えを振り払って……
「本当に避けてください!私……ハァ……」
何……?、なんか、おかしい……
先ほどまでかいていた冷や汗は、いつしか別の汗に変わっていて……
暑い……ううん、熱い……
どうして……?、上がる息を繰り返しながらギュッと身体を抱きしめた……