第79章 【ワナ】
「あ、あの……ですから、英二くんがここにいるって……」
その人たちの質問の内容からして、英二くんはここにはもう来ていないようで……
そう戸惑う私に、だからここで待ち合わせ、そう最初の店員さんが答える。
英二来るの?、ヤッタァ!、喜ぶ女の子たちに、この人たちが英二くんのオトモダチ……、そう思うと複雑な気持ちになる。
それにしても、英二くん、本当に来るのかな……?
もし苦しんでいるのなら、ここまで移動してくるの、大変なんじゃ……
やっぱり、おかしい気がする……
でも、女の子も多いし、とりあえずは大丈夫だよね……?
英二くんが本当に来る可能性も捨てきれないし……
不安な気持ちを落ち着けようと、用意されたドリンクを口に含む。
あ、思わず飲んじゃったけど……大丈夫、だよね……?
お酒なんて飲んだことないから、これが本当にアルコールフリーかどうか分からないけれど……
その時は色々精一杯で、薄暗い空間に周りの様子もはっきりとは分からなくて……
だから店員さんと他の男の人がそんな私を見て、ニヤリと笑ったのなんて全然気がつかなくて……
それを思い知るのは、あと数十分後……
「ね、あなた、英二とどんな関係?」
待たされること数分、1人の女の人がジッとドリンクを見ながら考え込む私に話しかける。
どんなって……、元カノ……?、クラスメイト……?
でも、勝手に話しちゃ、英二くん、嫌だよね……?
『念のためさ、菊丸って苗字、知られたくない仲間もいんだよね』
まだ英二くんに関係を強要されたばかりの頃、行為の最中にそう名前呼びに変えさせられたことを思い出す。
きっと英二くん、ここの人たちには自分のこと、必要最低限しか話さなかったんだと思う……
えっと……なんて言ったらいいか迷っていると、さっきの店員さんと数人の男の人が私の周りに座りこんだ。
「璃音ちゃんは英二のセフレ」
「そそ、んでもって、前のカシん時の埋め合わせ」
え____?
思いがけない彼らの言葉に、息を飲んで目を見開いた。