第79章 【ワナ】
クラスメイトたちと合流して受付をすませると、用意された部屋まで移動する。
カラオケなんて中学の時にナオちゃんたちと行って以来だから、懐かしく思うと同時に、どうしていいか分からずに戸惑ってしまう。
とりあえず美沙に続いて端の方に座ると、辺りを気にしてキョロキョロしてしまい、もしかして璃音初めて?、なんてみんなに聞かれちゃって、あ、いえ、約2年ぶりです、そう答えると、マジで?、じゃ、いっぱい歌いなよー?、なんて言われて……
いえ、だから私は歌いませんから、そう慌てて拒否したけれど、はい、早速!なんてタッチパネル式のリモコンを渡されて、いえ、だからっ!そう焦ってオロオロしてしまう。
「ほらー、みんな、璃音に無理強いしない!」
そう言って困っている私の手から美沙がリモコンをサッと奪ってくれたから、良かった、そうホッと胸をなでおろした。
「まずは歌より食べ物でしょ!、予約のコース料理の他に、単品でマルゲリータとカルボナーラ、焼きおにぎりにバラエティプレート、メガ盛りポテトと唐揚げ盛り合わせ、野菜はシーザーサラダ、すべて2つずつ……あ、あとチャーシューメン大盛りも頼むからねー」
私からパネルを奪った美沙は、そのまますぐに食べ物を注文し始める。
相変わらず……というか、いつも以上の量で驚いたんだけど、単品は私の奢りだから、みんなもどんどん食べてよ、そう言う美沙の気前の良さに、やっぱり素敵な人だなって嬉しくなった。
「んじゃ、璃音も歌いやすくなるように、このまま私が……」
注文を終えた美沙はそのままリモコンを操作して、パパッと曲を選んで送信する。
えーっ!!、と何故か起きたブーイング、イントロと同時にみんなが耳を塞ぎ出す。
どうして……?、そう不思議に思っていると、歌い出した美沙は強烈な外しっぷりで……
それはまるで未来から来た青い猫型ロボットのアニメに出てくるガキ大将も真っ青で……
お前は大人しく食べてろよ!、なんてみんなから浴びせられる笑い混じりのブーイングの中、美沙本人は気持ちよさそうに熱唱していた。