第79章 【ワナ】
その申し出はすごく嬉しいし、泊まりに行きたいんだけど……
でも、やっぱり……そんなに遅くなるのはダメだよね……
「……ダメですよ、私は行きません」
「えー、璃音は本当、真面目なんだから……」
すみません……、そう謝る私に、あ、悪い意味じゃないよ、そう美沙が慌てて手をブンブンと振る。
むしろ、良いところだから!、そう言ってくれたから心が軽くなったと同時に、融通の利かない自分を申し訳なく思った。
「なに?、なんの騒ぎ?」
時間ギリギリになって、教室に英二くんが入ってくると、一気にみんなの視線が向けられる。
「英二も行こうぜ!金曜日の夜、カラオケって話になってんだ」
「へぇー、いつもの駅前の?」
「それがさ、ちょっと遠いんだけど、すげー割引券手に入ってさ!」
ほら、これなんだけどさ、そう言ってクラスメイトは先ほどの割引券を英二くんに手渡したんだけど、それを見た彼はすぐに、目を大きく見開いて……
なんで、こんなもんがあんだよ!、そう大声を上げた英二くんに、な、すげーだろ?、そう周りのみんなが笑顔で答える。
「あ、あぁ……うん、そだね……」
英二くん……?
英二くんは少し考えるような仕草をして、それから、言葉を濁しながらも、無理に納得したように見えて……
その様子が気になったんだけれど、だからと言って私にその真意を確かめることなんてできなくて……
「んで、とーぜん、英二も行くだろ?」
「あー……オレ、バイトだから……」
「なんだよー、終わってから来ればいいじゃん!」
「……その後は……ちょっと……」
今度こそ思いっきり言葉を濁した英二くんに、どうせ芽衣子ちゃんとデートだろ?、なんて誰かが冷やかして、彼が気まずそうに黙り込む。
反論しないのは、当たっているからなんだよね……?
平気な顔をしていても、やっぱり胸が苦しくて……