第79章 【ワナ】
「美沙、本当に行くんですか……?よく見たらカラオケ店の場所、すごく遠かったじゃないですか……」
「もちろん行くよー!、カラオケ屋って食べ物高いじゃない?、私、いつも我慢してたんだよねー。交通費を払っても行く価値あるわよ!」
お昼休みも残りわずかになったころ、希望者たちと打ち合わせを終えた美沙が戻ってきたから、もう一度、説得しようとしたんだけど、もう行く気満々になっていて……
これは、なにを言ってもムダだな……、なんて苦笑いしながら、それでいつになったんですか?、そう問いかける。
「今度の金曜日!」
「……ずいぶん、急ですね……」
「その日限定の割引券なんだよねー」
つうことで、璃音も行くからね?、そう美沙が当然のように言ってくる。
私も……って、私も!?
思いがけないその誘いに、ええっ!?、そう驚きのあまり大きい声を上げてしまい、なんでそんなにびっくりするのよ、なんて呆れ気味に突っ込まれる。
だって、こう言うのって必ず英二くんも参加するし……
あ、でも、金曜日は確かバイトだったから不参加かな……?
それに、それだけじゃなくて、正直、そんな怪しげなカラオケ店なんて、気乗りしない……
ただでさえ、カラオケ好きじゃないのに……
「……私、生徒会の仕事が忙しいので……」
「大丈夫!行くの夜だから、6時に青春台駅前集合ね!」
「6時って……現地に着くの7時になっちゃうじゃないですか……帰る頃には補導されちゃいますよ!」
「もう、そんなの私服なら大丈夫だよ!」
……英二くんにラブホテルに連れていかれた時も、同じようなことを言われたな、なんて苦笑いする私に、その後、うちに泊まりにおいでよ、この間のお礼、なんて美沙は続ける。
カラオケはともかく、美沙の家に泊まりには行きたいな……
うちに来てもらったときも凄く楽しかったし……
あの時は英二くんのことで幸せだったからってのもあるけれど、美沙とまた一段と仲良くなれて、お母さんもすごく喜んでくれて……