第78章 【ゾウオノカタチ】
「まぁ、そんなつれない態度、とんなくてもいいじゃん?、英二とはあれから会ってる?」
「ええ……まあ……」
「英二、元気?、もう全然店に顔みせねーんだもんなぁ、女の子たちも悲しんでんぜ?」
へぇ……、英二先輩、本当にあのお店にもう行っていないんだ、そう思ったら嬉しくて、自然と頬が緩んでくる。
元気ですよ、そう緩んだ頬のまま答えると、その男は調子に乗って、これから俺と遊ばない?、なんて今度は腰に手を添えた。
「ダメですよ、私は英二先輩一筋なので」
「うわっ、もしかして英二と付き合ってんの?」
「……そうですけど……」
「マジかー!?、あいつもすっかり落ち着いちまったのかよー!」
結局、埋め合わせ、してもらえなかったかぁ……、そう肩を落とすその様子に、埋め合わせ……?、そうあの時のことを思い出す。
あの時、突然現れた先輩が私の口を手で塞いで、それから、私のことを譲ってよってこの男たちに言って、すぐに納得しないこの人たちと女の人に、まあまあ、今度しっかり埋め合わせすっからさ、そう言いながら先輩は私を通路の奥に連れ出してくれて……
「……埋め合わせって?」
「あー、まあ、そりゃ、大抵は女回してもらったり?」
つうことでどう?、英二の埋め合わせに一肌脱がない?、なんてまだしつこく誘ってくるから、だから英二先輩一筋ですから、そう笑顔でそいつの手の甲を思い切りつねると、それじゃ、もう会うこともありませんね、なんて言って歩き出す。
「はぁ……あの子でも良かったなぁ……すげーイイ、学年首席の女……」
学年首席の女……?、慌てて振り返りその男の顔をマジマジと眺める。
な、なに?、やっぱ脱ぐ?、なんてまだニヤニヤして言ってくる言葉を、しつこいですよ、そう冷たくあしらいながら考える。
二年生の学年首席って、もしかして、もしかしなくても……小宮山先輩よね……?