第78章 【ゾウオノカタチ】
みんなに問い詰められて、恥ずかしそうに「うん」と小さく頷いた。
生徒会執行部のクラスメイトに近づいて「充電が切れた」と嘘をつき、携帯を借りて小宮山先輩の電話番号を手に入れた。
夜も更けたのを見計らい、非通知で無言電話を何度かかけた。
『もしもし……?』
携帯の向こうで聞こえる、小宮山先輩の怪訝で少し不安げな声……
胸に広がり続ける嫉妬心が、罪悪感をあっさり飲み込んで、自分でも信じられないくらい淡々とした気持ちでその声を聴いていた。
「……しゃーっす……」
英二先輩に誘いを断られたことがショックで、こんな日に夕飯なんて作る気にならなくて、もう今日は外に食べに行こう、そう着替えを済ませて出かけた隣町の駅前商店街。
全くやる気のない気だるげな声と同時に、目の前に差し出されたチラシを軽く手であしらう。
あれ〜?きみ、どっかであったっけ?、なんてそのチラシ配りの男が声をかけるから、なにバイト中にベタなナンパしてんのよ、そう無視してそのまま素通りをした。
教室で英二先輩と小宮山先輩が抱き合っているところを目撃して、先輩の前では気にしないふりをしたけれど、心の中は前のこともあってすごくイライラしてて……
お気に入りのカフェで夕食を済ませても、やっぱりモヤモヤは消えなくて、さらにはこのナンパ……
どこだっけなー……絶対、会ったことあんだけどなー……なんてブツブツ言っている男を横目に、あー、もう、本当に今日は最低な日……、そう憂鬱な思いで歩き出した。
「ああ、アレだよ、あの時の!英二に持ってかれたすげー可愛い子!!」
英二先輩……?、無視してそのまま行こうとしたところで、思いがけない先輩の名前に振り返ると、それは確かに振られたショックでもうどうでもいいやって着いて行ったナンパ男の1人で……
あぁ……、そう立ち止まった私に、その男は、やっぱそうだよねー、なんて馴れ馴れしく肩に手を回してくるから、やめてください、そう言ってその手をサッと払いのけた。