第78章 【ゾウオノカタチ】
「その女、あのお店に来てたんですか……?」
「え?あ、いや、英二から聞いただけだけど……スゲーイイ、学年首席とヤってるって……」
あ、でも、身体だけのツマンネー女っても言ってたぜ?、そう私の雰囲気を察したのか、慌ててその男がフォローする。
……そう、英二先輩……そんなに小宮山先輩の身体、好きなんだ……
「……別に、過去に彼が他の女と遊んでたって、気にしませんよ」
……でも、小宮山璃音だけは別……
いまだに、先輩にちょっかいかけてくるあの女だけは……
「……なら、私、連絡してもらえればすぐに飛んでいきますから……」
昇降口、靴を履き替えたところで聞こえてきた小宮山先輩の声……
急いで確認すると、遠慮しないでくださいね?、そう言って英二先輩の手をギュッと握っていた……
そうやって英二先輩をしつこく誘って、本当、嫌な女……
チラリ、その男が配っているチラシに視線を向ける。
カラオケ代、総額八割引ってどんな割引券よ、そう呟く私に、ああ、あの店、俺らバイトに使って人件費抑えてっから、なんて男が笑う。
ああ、私、凄く面白いこと、思いついちゃった、かも……
「……ねぇ、一肌、脱いであげましょうか?」
「マジで?、じゃ、早速これからあの店に……」
「……だから違いますってば……」
そう、実際に脱ぐのは私じゃない。
私はただ、ちょっと小石を投げ込むだけ……
「今度の金曜日……その女をこの店に送り込んであげますよ」
だから、上手くやってくださいね……?、そう言ってその男からチラシをピッと取り上げると、口元に持って来てニイッと笑う。
ごめんなさい、小宮山先輩、でも全部、あなたが悪いんですからね……?
私の英二先輩に、いつまでも色目を使うから……
それに……案外、喜んで受け入れたりしてね……?
不二先輩の彼女のくせに、英二先輩とお楽しみなんですから……
「その代わり、私のことは絶対秘密にしてくださいね?」
そう言ってクスクス笑うと、携帯を取り出してその男に小宮山先輩の画像を送信した。