第78章 【ゾウオノカタチ】
そうだよ、もう忘れなきゃ……
そんな風に思いながら、もう一度ため息をついたところで、校門に駆け込んできた先輩とぶつかりそうになった。
気まずそうに差し出してくれた手を取ると、久々の先輩にドキドキして……
でも、先輩は相変わらず冷たくて、私と先輩は付き合っている、そうすっかり学校中の噂にもなっているのに、実際はそんなこと全然なくて……
やっと先輩に会えたのに、なおさら、辛くなっただけで……
その辛さを引きずったままのお昼休み、どうしても食欲が湧かなくて、心配してくれる友人たちには保健室に行くと嘘をつき、最初に先輩に告白した体育館裏へと向かった。
なんか、懐かしいな……
中二の時から憧れていた先輩と同じ学校に通えるようになって、菊丸先輩はすごくモテるくせに、絶対彼女作らないから厳しいよー?、そう内部進学の友人たちには言われたけれど、どうしても私の気持ちを知ってもらいたくて……
玉砕覚悟で告白したけれど、結果はやっぱり振られちゃって……
そんな風に、あの時のことを思い出しながら歩いていたら、少し前にチラッと見えた、英二先輩の後ろ姿……
それと……小宮山先輩……?
慌てて木の陰に隠れて2人の様子を伺うと、キョロキョロと辺りを見回しながら、体育館倉庫へと入っていった。
どう言うこと……?、そう思ったら、バクバクと心臓が震えだした。
だって、アレじゃ、まるで……でも……
しばらくその場から動けなくて、でも意を決して倉庫の窓からこっそり中を覗き見た。
嫌な予感しかしない中、薄暗い倉庫の中で私が見たものは、沢山の体育用具に見え隠れしながら、運動マットの上で寄り添う2人……
英二先輩が足元に跪く小宮山先輩の後頭部に手を添えて、何度も自身の方へと引き寄せている……
ああ……やっぱり……
嫌な予感はあっさり確信に変わって、私の心臓を締め付ける。
そして2人は、そのまま運動マットの上へと重なり合った……