第78章 【ゾウオノカタチ】
初めて2人の関係に気がついたのは、まだ先輩と付き合う前。
登校して校門をくぐったところで青く高い空に気がつき、もう10月なんだ……、なんて思いながら空を見上げていた。
二学期も始まって一ヶ月以上経つのに、先輩と顔を合わせる機会が全然なくて、やっぱり避けられているのかな……?、そうため息をついて……
そりゃ、「最後の思い出」って言ったのは私……
ずっと大好きだった先輩に、二度も振られたことがすごく辛くて、しかも二度目は仲良くなれた後だったから、なおさらショックで……
フラフラと夜の繁華街を歩いていたところで、軽そうな男たちに声をかけられて、そのニヤケ顔が義兄に重なり吐き気がした。
だけど、もうどうでもいいやって思って、別にカラオケくらいって着いて行って、でも案内されたところは確かにカラオケ店なんだけど、全然違う雰囲気に戸惑って……
帰るに帰れない状況になっちゃって、どうしようって思いながら出されたドリンクを飲もうとしたら、急に現れた先輩に驚いて……
何が何だか理解できない間に、先輩に個室に連れ込まれて、あんなに明るくて可愛い先輩が、実は全然違う顔を持っているなんて信じられなくて、でも状況からしてそう考えるしかなくて……
ショックだった……ずっと憧れていたから……
まだ氷帝学園に通っていた、あの中二の夏からずっと……
それでも、助けてもらえたのはやっぱり嬉しかったし、先輩に抱かれたいと思った。
例え一度きりでも、好きな人に抱かれてみたかった。
だって、私が知っているセックスは、愛だとか幸せだとか、そんなの関係ないものだったから……
無理やり、ねじ込まれて苦痛に耐える時間でしかなかったから……
だから、先輩から愛されてなくても、ずっと大好きだった先輩に抱いてもらえるなら、それでいいと思った。
でも、思った以上に行為の後の先輩は冷たくて……
だけど、望んだのは私だから、それでも仕方がないと自分に言い聞かせて、先輩のことはその一晩限りを思い出に、もう諦めようと心に決めた。