第14章 【キュウジツ】
「こんにちは~!」
「お、いらっしゃい、璃音ちゃん、今日も美人だねー!」
「もう、店長さん、褒めたって必要以上は買いませんよー?」
エリザベス……ダイアナ……
そんな適当にアロワナの名前を考えていると、お店にお客さんがきたようだ。
客なんてめずらしーじゃん?、そう思いながらも、たいして気にもせずその会話を聞き流す。
「ネコ丸くん、元気?」
「はいー、もう元気で暴れ回ってますよー、いっぱい食べるし」
ふーん、ネコ丸……ってなんだ、それ?
それにこの声って……そう気になってそっとカウンターが見える位置に移動する。
「今日はカリカリかな?そろそろネコ砂もなくなる頃だよね?」
「そうなんですけど……重くて持てないから今日はカリカリだけ」
そっと覗いたカウンターに見えたのは、今まで見せたことのないほどの、満面の笑みで話す小宮山だった。
へー、小宮山、本性隠してんのは分かってたけど、こんな風に笑うんだ……
あの日の朝も思ったけど私服も悪くないし、うっすらメイクもしてんじゃん……?
そう思ったら思わず見惚れそうになり、ないない、そりゃ絶対ない、そう半笑いで首を振る。
「そういや璃音ちゃんは青学の高校2年生だよね?」
「はい、そうですけど……?」
「ちょうど今、同級生が来ているよ、もしかして知ってるかな?菊丸英二くん」
えっ?て驚いた顔をしてこちらを振り向く小宮山に、やっほーと笑顔で手を振ると、彼女の顔が一気に赤くなる。
「えい、……ちがっ、き、きく……あ、え?」
予想外にオレがいたのと、おっちゃんがいるから何て呼んだらいいか分からないのとで、混乱しながら頭を抱えるその姿に、思わず吹き出しそうになる。
ほーんと、面白い反応するよな、なんて思いながら、小宮山も買い物?そう何でもない顔をして声を掛ける。
「あ、はい、え、英二くん……うちのネコの……」
「へー、小宮山、ネコ飼ってんだー、ネコ丸って名前?」
「……は、はい……」
そう言って小宮山は気まずそうに視線を泳がせた。