第77章 【セメテユメノナカデハ】
「……先輩?」
突然聞こえた声に振り向くと、芽衣子ちゃんが入り口からオレと小宮山を見ていた。
やべっ、このままじゃ小宮山に迷惑かける、そう慌てて小宮山から離れた。
芽衣子ちゃんに違うって言い訳しながらハッとして、これじゃ、小宮山を守りたいからっていうより、芽衣子ちゃんに知られたくないからみたいじゃんって思って……
しまった、そう小宮山の方に視線を向けたけど、でも今更なんだよって我に返って……
本当、小宮山に誤解されたくない、なんて、今更だっての……
それに芽衣子ちゃんに知られたくないのは事実じゃん……?
結局、オレはまた自分勝手な行動で小宮山を振り回して、挙句、目の前で芽衣子ちゃんを選んで、また突き落として……
もう、ゴメンって言葉だって、聞き飽きたよな……
今にも泣き出しそうな小宮山を1人残して、芽衣子ちゃんと腕を組んだまま教室を出た。
先輩、もう他の人と間違えないで下さいね?、そうクスクス笑う芽衣子ちゃんに、うんにゃ、気をつけるよ……、そう笑って返事をした。
うん、気をつけるよ……
これ以上、小宮山を傷つけないようにさ……
「英二くん……!」
昇降口で靴を履き替えたところで小宮山に名前を呼ばれた。
まさか追いかけて来るなんて思わなくて、もう二度と名前なんて呼んでもらえるとも思ってなくて、だからすげーびっくりして……
いつの間にか落とした絆創膏を届けてくれて、苦しかったら呼んでいいって言ってくれて、それから、笑顔を見せてくれて……
小宮山……まだ、オレのこと、甘やかしてくれんだ……
ペコリと頭を下げて去っていく小宮山の背中をジッと見つめる。
追いかけて抱きしめたい衝動を必死に堪える。
先輩、行きましょう……?、芽衣子ちゃんの声に我に返り、慌てて笑顔を向けて歩き出す。
小宮山……さすがに甘えるわけにはいかないけどさ……
でもそう言ってくれて、オレ、すげー、嬉しかったよん……
複雑な涙が滲み、慌てて芽衣子ちゃんに見つからないようそれを拭った。