第77章 【セメテユメノナカデハ】
せめて夢で会いたいと思った……
夢の中で抱きしめて、キスして、小宮山の笑顔がみたい……
自分勝手だけど、本気で願った……
小宮山はオレが捨てたのに……
裏切って芽衣子ちゃんに乗り換えたのに……
あれ以来、決して見られなくなった笑顔……
オレが見ることができるのは、隣の席でいつも涙をこらえる姿だけ……
そんなの、当たり前なんだけど……
そうなることが分かっていて、それでも芽衣子ちゃんを選んだんだけど……
小宮山の香りを嗅いでいたら、自然に眠気が襲って来て……
あれ以来、全然、眠れなかったのに、あっという間に眠くなって……
夢の中で小宮山が髪を撫でてくれた……
ああ……懐かしい……優しいこの手つき……
間違いない……かーちゃんでも、ねーちゃんたちでもない……
小宮山だ……
願い通り夢の中に出て来てくれた小宮山の身体に腕を回して、そのお腹に顔を埋める。
懐かしい温もり……いっきに胸の痛みも苦しみも消えていって……
でも、すげー嬉しいのに小宮山はやっぱり泣きそうな顔をしていて……
なんだよ、夢の中でくらい笑ってよ……、そう思って頬に触れたら、小宮山がぎこちなく笑ってくれた。
その瞬間、頬に感じた冷たい感触……
一気に意識が覚醒していく……
夢、じゃない……
夢だと思っていたのは現実で……
じゃあ、ずっと髪を撫でてくれていたのは……
オレを優しく抱き寄せてくれていたのは……
本当に小宮山……?
夢だったって気がついたのに、もう一度小宮山の身体を抱き寄せた。
離したくなかった……まだ夢の中にいたかった……
「あ、あの……もう少しだけ、寝ぼけててもらっても、いいですか……?」
「……小宮山がいいなら……いいよ……」
ずるい言い方をして小宮山を繋ぎ止めた。
そんな身勝手なオレに怒りもせず、それどころかオレの絆創膏に気がついて優しく撫でてくれたから、我慢できずに力一杯抱きしめた。