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【テニプリ】闇菊【R18】

第77章 【セメテユメノナカデハ】




コツン、ふとつま先に何かが触れた感覚に視線を落とす。
これって……英二くんの……?
足元に落ちていたのは白いテープ式の絆創膏……
一般的なものと違うそれは幼い頃からの英二くんの大切なもの……


ハッとして立ち上がる。
英二くん、これがなくちゃ、困るかもしれない……
彼の手首に貼られた絆創膏が鮮明に蘇る。
私のお腹に顔を埋めて安心した顔をするその様子も……


もしかしたら……鳴海さんじゃ、英二くんの心の隙間を埋めることは、出来ないのかもしれない……


英二くんは鳴海さんを好きでも、そこだけは、私じゃなきゃ、ダメなのかもしれない……


自惚れかもしれないけれど……
私の願望かもしれないけれど……


それに、今まで辛すぎて気がつかなかったけど、よく考えてみたら、最近の英二くん、本物の笑顔じゃない……よね……?


気がつくと、その絆創膏を握りしめて走り出していた。








「英二くんっ!」


昇降口で靴を履き替えた英二くんが驚いた顔で振り返る。
あ、名前で呼んじゃった……、そう一瞬、口ごもったけれど、でも、もう、そんなことどうでもよくて……


「……どったの……小宮山さ……」

「あ、あの、これ……忘れ物です」


あ、そう英二くんは私の手の中の絆創膏を驚いた顔で見て、それから自分のポケットを手であさり、ほんとだ、あんがとね……、そう気まずそうに手を差し出す。


「あの、苦しいときは、呼んでくださいね……?」


私のその言葉に、英二くんが目を見開く。
唐突すぎたかな?、そう思いながらも、真っ直ぐに彼の目を見つめ返して、もう一度繰り返す。


「私の思い過ごしなら、忘れてください。それでも、もし英二くんが望むなら、私、すぐに飛んでいきますから……」


遠慮、しないでくださいね……?、そう絆創膏を手渡しながら笑顔を作る。
まだぎこちないけれど……心からは笑えないけれど……
それでも、前向きになれた分、さっきよりはずっと上手に笑えてる……

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