第77章 【セメテユメノナカデハ】
「ご、ごめんなさい……私……」
「はは……すげー……ほんとに、夢に出て来てくれたんじゃん……」
夢……?、あ、英二くん……また寝ぼけてるんだ……
英二くんはいつも寝起きはすっきりしないことが多いみたいで、いつも起こすとボーッとしてて、それから、よく寝ぼけることも珍しくなくて……
でも、ほんとに夢に出て来てくれたって、どういうこと……?
もしかして、私の夢、見たかったの……?
微睡んだままの英二くんと視線をかわしながら、カーッと顔が赤くなる。
いやいや、そんなはずないよね……?、なんて慌てて自己満足な考えを追い払う。
それから、もしかして私と鳴海さんと間違えてる……?、そう思ったら胸が苦しくて……
「……小宮山……こっち……来て……?」
私……!?
やっぱり鳴海さんと間違えてるわけじゃないんだ……!!
英二くんが私の夢を見たいって、すごく嬉しいんだけれど……
今のこの状況も、どうしようって気持ちとは裏腹に、本心は喜んでいるんだけれど……
でも、だからって、本当に英二くんのそばに行けるはずもなくて、どうしたらいいか分からずオロオロしてしまう。
「はやく……もっかい、髪、撫でて……すげー……キモチ、イイ……」
ゆっくりと英二くんが身体を起こして私に手を伸ばす……
ダメ……ダメだよ……
英二くんは鳴海さんと、付き合ってるんだから……
もう私のものじゃ、ないんだから……
分かってるけれど……
嫌というほど、思い知らされているけれど……
だけど、私が英二くんのお願いを、断れるはずなんかなくて……
ううん、違う……
私が、英二くんに触れたいの……
このまま、もう一度、英二くんの髪に触れて、それから、前みたいに、その身体を抱きしめてあげたいの……
だって私、英二くんが大好きなんだもの……
例え鳴海さんのものだって関係ない、そんな風に思ってしまったんだもの……
しっかりと私に伸びる英二くんの手をとって、それからその後頭部を引き寄せた。