第77章 【セメテユメノナカデハ】
それに気がついてしまった……
すぐ近くで見た彼の手首に貼られた複数の絆創膏……
英二くんのそれは、一般的な擦り傷や切り傷に貼られるそれとはまるで別物……
英二くん、これ、苦しい時のおまじないでしょ……?
痛いの、痛いの、飛んでけって貼り付けたんでしょ……?
きっと、身体のあちこちに、沢山、貼ってあるんでしょ……?
どうして……何がそんなに苦しいの……?
胸がギューっと締め付けられる……
無意識に、本当に自然と、英二くんの髪に手を伸ばした……
そっと撫でる英二くんの外ハネの髪……
ピクッと少しだけ英二くんの身体が反応し、慌ててその手を引っ込める。
び、びっくりした……、起こしちゃったかと思った……
ふうーっと大きく息を吐いて、それからもう一度手を伸ばし直す。
英二くん……、今度はしっかりと触れた髪の毛……
ゆっくりと癖沿いに指先を流す……
久々に触れた英二くんに胸がドキドキと高鳴って、それからキューッと切なくなる……
英二くんはいつも私の髪を大好きって言ってくれたけど、私だってこの癖っ毛が大好きで……
笑顔満点のときは元気に跳ねるし、悲しそうなときはシュンと下向きになるし、怒るとどこか逆立って見えるそれ……
今は、この外ハネもどこか苦しそう……
「大丈夫……大丈夫……」
小さい声で何度も繰り返す……
以前、英二くんが苦しくなったとき、私の胸で涙を流していたときと同じ……
そうすると、険しい眉間のシワがなくなって、少しずつ穏やかなものになっていく気がして……
もう行かなきゃ、いい加減、起こしちゃう……
勝手なことすんなって、怒られちゃう……
それでもやっぱり離れがたくて、あと少しだけ、もう少しだけ、そう自分に言い訳をする。
でも何度か繰り返した次の瞬間、英二くんの目がゆっくりと開いて、パチリと視線がぶつかった。
ドキン、大きく跳ねる心臓と身体……
や、やだ……!、慌ててその手を離して、数歩、後ずさりする。