第77章 【セメテユメノナカデハ】
「痛っ!、資料の紙で指の先、切っちゃったよ」
「うわー、それってちょっとでも痛いよね〜」
生徒会室でいつものように仕事をしていると、一緒に作業をしていた人たちが怪我をして、あ、私、絆創膏ありますよ?、そう言って通学カバンの中のポーチを出したところで、大変な事態に気がついた。
それはいつも持ち歩いている、小説のアイディアやプロットをまとめたメモ帳がないということ。
自分でも蒼い顔をしているのが分かるくらい、一気に血の気が引いていく。
小宮山さん?、そんな私の様子に怪訝な顔をするその人たちに、あ、いいえ、なんでもないんです、そう絆創膏を渡しながら平気な顔をしたけれど、内心は気が気じゃなくて……
あー、もう、なんで私、学校に持ってきたんだろう……
机の中に確かに入れたのは間違いないから、よほどのことがない限り、誰かに見られることはないと思うんだけど、万が一、アレが人様の目に触れることになったら、私、恥ずかしすぎてもう生きていけない……
すぐに取りに行きたかったけど、仕事中だからそうにもいかず、内心、すごく焦りながらも仕事を続けて……
やっと手が空いたから、すみません、ちょっと教室に……、そう断って慌てて生徒会室を飛び出した。
ああ、神様、どうかそのまま机の中にありますように……
祈るような思いで教室のドアを開けたところで、身体を固まらせる。
そこで見たのは、誰もいない教室の中、ひとり、自身の席で寝息を立てる英二くんの姿……
英二くん……どうして……ミスコンの打ち合わせは……?
だって時間的にはまだ体育館で打ち合わせをしているはずで、鳴海さんと一緒なんだから、まさか英二くんがサボるはずないと思って、どうしよう……、そう教室に入りかけた足を一歩後ろに戻す。
また後で来ようかな……でも、寝てるし大丈夫だよね……
起きていたらもちろん気まずいところだけど、幸い、英二くんはお昼寝中……
足音を立てないように、そっと自分の席へと近づいた。