第77章 【セメテユメノナカデハ】
「小宮山……」
机にうつ伏せになり、そのシャツに顔をうずめる……
すーっと胸に広がる小宮山の香り……
痛みは増していくも息苦しさは不思議と治っていく……
ハラハラと溢れる涙……
拭っても拭ってもきりがないそれを、そのままシャツへと染み込ませる……
なに、泣いてんだよ……
オレが泣く資格なんか無いじゃん……?
小宮山のこと、散々泣かせといて、オレが泣く資格なんか……
そう思うんだけど、どうやったって涙は止まんなくて、はは……止まんねぇや……、そう自分にあざ笑う。
それから、クンクンと確かめるように鼻を鳴らす。
凄く懐かしくて、凄く苦しくて、凄く、安心する小宮山の香り……
そのうち、自然と訪れる微睡み……
あぁ……このまま、ゆっくりと飲まれていけば……すぐに眠れる……
あんなに眠れなかったのに……
小宮山の香りを嗅いだだけで、こんなに簡単に眠れるなんて……な……
ギュッと小宮山の香りのするシャツを抱きしめる……
芽衣子ちゃんを抱きしめながら感じている違和感……
本当は、力一杯、小宮山を抱きしめたい……
でもそんな想い、絶対、誰にも悟られるわけにはいかないから……
自分が決めたことだから……
小宮山より芽衣子ちゃんを選んだのはオレだから……
小宮山への想いは胸の奥底にしまい込んで、芽衣子ちゃんをこれでもかってほど、大切にするんだ……
でも……
でも……せめて……
夢の中でだけは……
……小宮山を抱きしめらんねーかな……?
力一杯……抱きしめて……キス……して……
また2人でいっぱい笑い合って……
もう2度と叶わないのは分かってるけど……
自分から手放したくせにむしがいい話だけど……
せめて夢の中でだけは……
今までと変わらず、恋人同士のまま……
どうか、夢の中でだけは____