第77章 【セメテユメノナカデハ】
「ありゃ、誰もいない……」
息苦しさを感じながら戻った教室には誰もいなくて、まだそんな遅い時間じゃないのに……って不思議に思って……
それから、そういや用事がないやつらで買い出しに行くって言ってたっけ……なんて思い出す。
それから次に目にとまったのはオレの机にチョコンと乗っかる紙袋……
なんだっけ……?、そう思いながら手に取ると、袋を開いて目を見開いた。
オレのシャツ……なんで……?
袋から取り出した途端、あたりに広がる小宮山の香り、それから、シャツの間に隠すように入れられたゴムの箱……
あぁ、これ、小宮山の家に置きっぱにしてた……
「えぇ、これ、ここに置いておくんですか?」
「だって一日中小宮山んちにいたら、財布に入れとくぶんじゃ足んないじゃん?、そんなんで我慢すんのなんか、オレ、ヤダもんね!」
「で、でも……その、お母さんにもし見つかったら、私……」
「大丈夫だって、うちと違って、小宮山のかーちゃん、勝手に物色しなそうじゃん?」
それはそうですけど……、そう眉を下げて困った声を上げる小宮山に、んじゃ、よろしくねん!、そう言って無理やり箱ごと押し付けた。
結局、なかなか行かないうちにあんなことになっちゃって、これの出番はないままだったけれど……
んじゃ、このシャツは小宮山の家に忘れてきたやつか……
着てったはいいけど、一度脱いだら忘れちゃって、どうしますか?、そう夜の電話で問いかける小宮山に、今度でいいやってそのまま保管しててもらった。
シャツから漂う懐かしい小宮山の香り……
くんっ、鼻を押し付けると真新しいその匂いに、返す前にもう一度洗い直してくれた小宮山らしい気遣いが伺えて……
小宮山、このシャツとゴム、どんな思いで袋に入れたんだろうな……
袋にこれらを入れる小宮山の顔が安易に想像できて、どんどん涙が溢れてくる……
ゴメン……、そう隣の席に視線を向けて謝ると、またシャツに顔を埋めてその香りを確かめた……