第77章 【セメテユメノナカデハ】
学園祭のメインイベントで堂々と芽衣子ちゃんとステージに立てば、嫌でも小宮山の目にとまる。
それでも、あの日、決めたんだ……
たとえ小宮山を悲しませたって、芽衣子ちゃんのお願いなら、なんだって叶えてあげたいって……
あの日、震える芽衣子ちゃんを抱きしめながら、そう、誓ったんだ……
良かった、先輩以外となんて、絶対嫌だったんです、そう嬉しそうに抱きついてきた芽衣子ちゃんを受け止めながら、心の痛みを胸の奥底へとしまい込んだ……
「なな、英二、お前の彼女、やっぱ断トツだよなー!」
1人離れて打ち合わせの様子を眺めるオレに声を掛けてきたのは、実行委員の同級生。
去年、同じクラスだったそいつはオレの横に座ると、あの人は足が綺麗だとか、性格がどうだとか、ミス青学候補のファイナリストたちを、なんだかんだと値踏みしていく。
「でもやっぱ、俺は小宮山璃音だよなー、なーんでミスコン、エントリーしねーんだろ、俺、イメチェンしてから、結構、マジで気になってんだけどさー……」
突然とびだした小宮山の名前に、ガバッとそいつの顔を見てしまい、な、なんだよ、なんて驚かれて、い、いや、そう慌てて目をそらす。
「お前が小宮山さんをって、なんか意外ーだにゃー……なんてさ……」
「そうかー?、俺、美人系好きなんだよな、そんで可愛いしさ、それに人見知りな感じが守ってあげたくなんね?」
平気なふりで笑顔を作りながらも、胸の奥がモヤモヤと騒ぎだす。
今までだってこんなこと、いくらでもあった。
そもそも、オレが優越感に浸りたくて顔を晒させたんだし……
第一、オレがモヤモヤする資格なんかないじゃん……?
オレは、小宮山を捨てた男なんだからさ……
モヤモヤする胸をグッと抑え、そう自分に言い聞かせるオレには気づかずに、でもなー、不二が相手じゃ、どう足掻いても勝ち目ないもんなー、なんてそいつは話し続ける。
「おまけに身体もすげーエロそうじゃん?おっぱい、でっかいって噂だしさ?」
やりてーなー、その言葉にカッとして、やめろよ!、そう思わず大声を張り上げる。
その声に体育館中の視線が一気にこちらへと注がれた。