第77章 【セメテユメノナカデハ】
「英二、おっそーい!、みんな忙しい中集まってんだからね!」
「だーかーらー、ごめんってば!」
おもいっきり遅刻したオレに上がった抗議の声を軽くあしらいながら、その片隅で嬉しそうに笑う芽衣子ちゃんを後ろから抱きしめる。
……なんど抱きしめても消えない違和感……
ちょっと前までは女なんて誰だって同じだったのに……
そんな思いを振り払うようにギュッと力を込めると、その手にちょんと芽衣子ちゃんの手が添えられた。
「遅れてきたくせにイチャついてんじゃねーよ!」
「へっへーん、うらやましいだろー?」
その体制のままピースサインしてニイッと笑い、んで、どうなってんのさ?、さっさと始めようよ、なんて輪の中心に向かって声を掛けると、遅れてきた奴がしきるなよ、そうみんなが苦笑いをする。
さっさと初めて、さっさと終わらせたい……
出来れば学園祭も、何もかも、あっという間に終わっちゃえばいいのにな……
「それじゃ名前を呼ばれたら、エスコート役の男子たちはさっき説明したように彼女を誘導して、それぞれの立ち位置にお願いね」
今日の打ち合わせは、顔合わせと簡単な当日の流れの説明、それから立ち位置確認……
みんな、もらったプリントに目を通しながら、実行委員の担当者の指示でステージ上をウロウロしている。
って、オレもその当事者の1人なんだけど、なんとなくその輪から離てぼんやりとその光景を眺めていた。
「あくまでも主役は女子だから、男子は目立ちすぎないように。分かった、英二!?」
なんでオレだけ名指しなんだよ、なんて思いながら、ほーい、そう言って後頭部で腕を組む。
一度は断った芽衣子ちゃんのエスコート役……
「先輩、今度は引き受けてもらえますか?」
付き合うことになってからもう一度頼まれたとき、一瞬、浮かんだ小宮山の顔……
だけど、もちのろんだよん、そうウインクして快く引き受けた。