第77章 【セメテユメノナカデハ】
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制服の内ポケットで着信を知らせる携帯……
ゆっくりと起き上がり、ディスプレイを確認すると、一呼吸置いて、タップする。
「ほいほーい、芽衣子ちゃん♪」
跳ねる声……上がらない口角……
声と顔に生じる、微妙な温度差……
『先輩?、今、どちらですか?、もうミスコンの打ち合わせの時間ですよー?皆さん、体育館で待ってます』
「うわっ、もうそんな時間!?、今からいくからさ、みんなに謝っといて!」
『どちらですか?』、あえてスルーしたその質問。
ここ、屋上の入り口の上は……芽衣子ちゃんには立ち入られたくない指定席……
ずっとここで1人、空を見ていた……
……それから……小宮山とも、一緒に……
いくら芽衣子ちゃんのお願いだからって、体育館裏の小宮山のお気に入りの場所をぶち壊しといて、自分の聖域には踏み込ませたくない、なんて、本当、調子いい話だよな……
はは……、携帯をポケットに戻しながら、そんな勝手な自分に嘲笑う。
それから、フーッとため息をついてパチンと両頬を叩くと、ニッと笑って立ち上がった。
よっといつものように飛び降りると、ギュッと胸を押さえて自分に言い聞かせる。
大丈夫、もうここには芽衣子ちゃんしかいない……
小宮山は……この上に置いてきた……
ドアを開けて潜る直前、一瞬だけさっきまでいた場所を眺めると、あとは一気にかけだし屋上を後にした。
「おまたへ、みんな、遅れてごっめーん!」
放課後の体育館に飛び込むと、一斉に振り向いたのは、ステージに顔を揃えている学園祭実行委員数名と、ミスコンファイナリストの女子たち、それから、そのエスコート役の男子たち。
学園祭のメインイベント、当日は外に作った特設ステージで開催されるらしいけど、まだ出来ていない今日はここで事前の打ち合わせをすることになっている。