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【テニプリ】闇菊【R18】

第76章 【アノヒ】




「先輩……ありがとうございました……」

「別に……オレはなんもしてないよん……」

「いいえ……先輩が来てくれなかったら……私、またあの男に無理やり……」


あの男が帰ってからも、泣き続ける芽衣子ちゃんを放っとけなくて、小宮山との約束をドタキャンした。
部屋に入ってからもずっと芽衣子ちゃんは震えたままで、よほど怖かったんだろうとその身体を抱きしめ続けた。


「……あの人、お父……様の、再婚相手の連れ子なんです……」


しばらく腕の中で泣いていた芽衣子ちゃんだったけど、その涙が落ち着いた頃、ゆっくりと身の上話をし始めた。


本当のかーちゃんは幼い頃に病気で亡くなったこと。
中学のとき、とーちゃんが再婚して2つ上のあの男が義理のにーちゃんになったこと。
義理のかーちゃんは芽衣子ちゃんに意地悪だったこと。
優しかったとーちゃんが、だんだん芽衣子ちゃんに無関心になっていったこと。


そしてある日、突然、部屋にやって来たあの男に襲われたこと……


家のことや色々なことを考えたら、とても訴えることなんかできなくて、ただひたすら我慢するしかなくて……
でもある日、義理のかーちゃんにしれちゃって、全て芽衣子ちゃんのせいにされて、氷帝に進学はもちろん家にもいられなくて、こんなボロアパートひとつ用意されて……


「あの女……、両手の自由を奪われ、泣き叫ぶ私に跨るあの男を見ても、私が誘惑したんだってヒステリックに騒いで……、父親もその言葉を鵜呑みにして、私の話なんて全く聞いてくれなくて……」


ああ、やっぱり……
その内容はオレが想像していたものとだいたい同じで、きっとなに不自由なく幸せに過ごしていた芽衣子ちゃんが、親の都合で運命を変えられて、どれだけ傷つき、絶望したかを想像すると……


いや、思い出すっていった方がいいかもしんない……


幼い頃、理不尽な虐待に耐え続け、結局、最後は捨てられ置き去りにされたあの頃のオレ……


狭くて古いアパートの一室で、たったひとりきりで……


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