第76章 【アノヒ】
「そんなことしてお前、楽しかったかよ?、まぁ……こんな風に芽衣子ちゃんの前に現れたんだから、なーんも反省してねーんだろうけど……」
氷帝のおぼっちゃんも、たかが知れてんな……、そうすっかり萎縮しているそいつに向かって、これでもかってくらい嘲笑う。
「な、なんだよ、テメェ!、俺にそんな態度とってタダで済むと思ってんのかよ!?、俺がその気になったら、お前なんか芽衣子とは簡単に会えなく出来んだからな!!」
オレの挑発に頭に血が上ったそいつは、激昂して震える拳を振り上げると、オレに向かって殴りかかってくる。
ちょっとぉー、気、短すぎじゃん?、そうため息をつきながら、芽衣子ちゃんをしっかりと抱えなおすと、ヒョイっとその拳を交わした。
おっそ……
女の子1人抱えているというのに、その拳はたいした勢いも感じられなくて……
何度も飛びかかってくるそいつを交わし続けるうちに、そいつは、ハァ、ハァとあっという間に息切れしだして……
もうちょっと鍛えた方、いいんじゃないのー?、なんて呆れながら、すっかりへばったそいつから、芽衣子ちゃんを守るように背中に隠した。
それにしても、マジで芽衣子ちゃんの弱み握られてんなら、ちょい面倒だな……
こう言うのは乾や不二なら得意なんだけど、オレははっきり言って得意じゃなくて……
どうすっかな……、そう心の中でため息をつく。
「バッカみたい……あんたなんて先輩に敵うはずないでしょ?」
息切れをしてうずくまるそいつを蔑みながら、背中の芽衣子ちゃんが冷たく言い放つ。
……うるさい、その声にピクッと反応したそいつが、ボソッと吐き捨てるように呟いた。
「先輩は凄いんだから……親の脛かじって好き勝手しているあんたとは違うのよ!」
「うるさい……うるさい!」
冷たくそいつを罵る芽衣子ちゃんの声と、息を切らしながら怒りで震えるその男の声……
その様子に、それ以上はヤバイって、そう芽衣子ちゃんを制止しようとしたその瞬間、うるさい!うるさい!うるさい!!、そう男が大声で怒鳴りだす。