第76章 【アノヒ】
これじゃ、まるで……蘇る幼い頃の記憶……
一気に息苦しさが襲ってきて、慌てて大きく息を吸い込んだ。
ダメだって……今はそんなこと考えてる場合じゃない……
何がどうなってんのかなんて分かんないけれど、はっきりしていることはひとつ……
芽衣子ちゃんはニヤけた顔でオレ達を見ているこの男を、よく思ってないと言うこと!
「はは、なんだよ、芽衣子、おまえ、男、連れ込んでんのかよ?」
「そんなの、お前に関係ないだろ!?」
思いきりそのニヤけ顔を睨み付けると、その男は更にゲラゲラと笑い、それがカンケーあるんだよ、そうムカつく笑みを浮かべる。
なんなんだ、こいつ……?、そう思いながら、どう言うことだよ?、そう問いかけると、言ってもいいけど、芽衣子がこまんじゃねーの?、なんてまた笑うそいつのその言葉に、腕の中の芽衣子ちゃんがビクッと肩を震わせた。
……あー……この感じ……すげー、覚えがある……
このムカつく笑みを浮かべている男は、多分、かつてのオレと、同類……
「……別に?、なに聞いたって、驚きゃしねーって……」
久々に出した低い声……
今度はその男が怯えた顔をして、芽衣子ちゃんが不安げにオレの顔を見上げる。
「お前みたいなやつ、オレ、いくらでも知ってんもん……、珍しくもなんともねーよ?」
芽衣子ちゃんもなんも気にしなくていいよん?、そっと芽衣子ちゃんの耳元で囁くと、先輩……、そう泣きそうな顔をオレの胸に埋める。
安心するようにその髪を撫でると、もう一度その男に視線を戻した。
「で、お前、芽衣子ちゃんに何したって?、無理やりヤッたの?、脅して言うこと聞かせた?」
……それはオレが小宮山にやったこと……
ズキン、久々に思い出し、一気に罪悪感が蘇る……
オレのその言葉に、腕の中で一段と大きく震えた芽衣子ちゃんと、動揺して視線を揺らす男のその様子に、ビンゴかよ、そう胸が苦しくなる……
ガタガタと震え続ける芽衣子ちゃんが小宮山と重なり、更にキツく抱きしめた。