第75章 【ユウジントシテ】
「明日の朝はちゃんとここに来るよ。それから友人として小宮山さんの支えにもなる」
だけど、今、幸せにするのは、僕の役目じゃないよ……、そう続けながら、また小宮山さんの泣き顔を思い出す。
いつか……英二も小宮山さんも、お互いのことを忘れ、過去と思える時が来たら……
その時は、僕が小宮山さんを幸せにするから……
不安に押しつぶされそうになって、涙なんて流させやしないから……
「さ、行こう」
顔を上げて東屋をでる僕に、英二が不思議そうな顔をする。
どうせ行くつもりなんだろ、桃のところ、なんて言っていつもの笑顔を見せると、ん……、そう英二は気まずそうに返事をした。
鳴海さんと一緒にいるということは、小宮山さんと僕の他に、もう1人、大切な仲間を傷つけるということ。
真剣に彼女と付き合うつもりなら、彼女に想いを寄せる桃に英二が何も言わないはずがなくて……
「オレ、1人で大丈夫だよん……ちゃんと桃に言うからさ……」
「桃は僕と違って感情的だからね、確実に殴られるよ?」
「覚悟できてる……不二にだって、オレ、殴られるつもりだったしさ……」
「僕が心配なのは桃。暴行傷害で逮捕、なんてことになったら大変だからね」
英二は自業自得、そう笑って歩き出した僕に、英二が力ない笑顔を見せる。
ああ、やっぱりキミは笑顔の方が似合ってるよ……?
それが偽物なのは残念だけどね……
鳴海さんは小宮山さんのように、英二を本当の笑顔にしてくれるのかな……?
ね、英二……
それから、僕らは桃のところに向かった。
案の定、桃は英二に怒りをあらわにして、そのまま掴みかかるところを必死に制止した。
なんでですかっ!?、そう鼻息を荒くして大声を張り上げた桃だったけど、英二の真剣な様子に、結局は納得するしかないといった様子で……
「不二、こんなオレと友達でいてくれて、あんがとね……」
「クスッ、いまさら?」
ぽつりと呟いた英二に笑顔を向けて歩き出す。
そんな僕の背中にもう一度、サンキュ、そう英二が小さく呟いた。