第75章 【ユウジントシテ】
「……そう、英二はそれで小宮山さんより、鳴海さんを選んだんだね……」
「……オレには、そうするしか……ないから……」
「だけど、英二……、本当にそれでいいの……?」
英二の話に少し冷静さを取り戻した僕は、英二から少し距離を取り、東屋の柱に背を預ける。
いいんだって……、そう頷く英二に、もっとはっきり言うよ?、そうその目をまっすぐに見て問いかける。
「本当にそれで、小宮山さんを忘れられるの?、そんな気持ちで一緒にいて、鳴海さんを幸せにできるの?」
明らかに気持ちは小宮山さんにあるのに……
鳴海さんが英二を好きなら尚更、小宮山さんも鳴海さんも、そして英二本人も不幸になるだけなのに……
僕のそんな質問に、英二はまた空に視線を向けて、それから、グッと胸の前で手を握りしめた。
「……好きになれるよ……、オレ、芽衣子ちゃん、めちゃくちゃタイプだし、すげー、可愛いって思ってる……」
英二……好みのタイプと好きは、イコールとは限らないよ……?
それに思い浮かぶのは、これからの英二と鳴海さんに、酷く傷つき苦しむであろう小宮山さんの姿……
あれほどひたむきに、いつだって英二だけを思い続けてきたのに……
でもそれを口にするのは、英二を余計に追い詰めるだけで……
「だから……小宮山は……不二が……幸せにしてやって……」
オレ、不二じゃなきゃ……嫌だから……、その英二の言葉に、フーッとため息をついた。
僕だって、そう出来たらと、なんど願ってきたことか……
だけど、こんなに苦しんでいる英二から、小宮山さんの心を奪うことなんてできなくて……
だいたい、小宮山さんは決して英二しか見てなくて……
次に英二が小宮山さんを酷く傷つけたなら、黙ってないつもりだったんだけどな……
それはお断りだよ、そう静かに呟いた僕の返事に、英二は戸惑いの視線を向けた。