第75章 【ユウジントシテ】
「本気で……言ってるの……?」
「だから、冗談でこんな事、言わないって……」
あんなに大切にしている小宮山さんより大切にしたい人……?
途端、頭に浮かんだ1人の女生徒……
まさか、そんなはず、ない、必死にその可能性を否定すると、次に浮かぶのは小宮山さんの不安げな顔……
「……それって、誰のこと?」
「……不二にはカンケーないじゃ……」
「答えるんだ、英二!!」
英二の消えそうな声を打ち消した。
関係ない……?、冗談じゃないよ、そんな事、言わせない。
僕の気持ちを知っていて、それでも小宮山さんを捨てるというのなら、納得のいく理由を聞かせてもらう……!
「……芽衣子、ちゃん。オレ、これから芽衣子ちゃんとずっと一緒にいるって、約束したんだ……」
その瞬間、英二!!、そう叫んでその胸ぐらを掴んだ。
それはあの時と同じ……
英二の部屋でまだセフレだった小宮山さんに、英二が酷い言葉をぶつけた時……
あの時は小宮山さんが必死に僕を止めたけれど……
そんな彼女のいじらしさに自分の気持ちを沈めたけれど……
今は、この手を止めるやつなんか、誰もいない……!
誰もいないのに……
あの時と同じように、目を伏せたまま全く抵抗しないその英二の様子に、どうしても拳を振り上げることが出来なくて……
震える英二の頬に、つつーっと一筋の涙の川が出来る……
英二と同じように項垂れながら、その身体をとんっと突き放す。
やっぱり殴ることなんか、出来ないよ……
小宮山さんに別れを告げることに、こんなに心痛め、苦しんでいる英二を、殴ることなんか……
僕には……出来ないよ……
「どうして……鳴海さんを……?」
「……オレさ……、芽衣子ちゃんと同じとこでバイトしててさ……」
ポツリ、ポツリと訳を話し出した英二の言葉に、僕は言葉を失った。
もしそれが、彼女に弱みを握られた、なんて、よくある小説や漫画の展開なら、僕だって全力で彼女を潰しに行けるのに……
英二を引き止め、説得する方法が、どうしても見出せなくて……