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【テニプリ】闇菊【R18】

第75章 【ユウジントシテ】




また黙ってしまった英二に、ハァ……とため息をつく。
このままじゃ、拉致があかないな、そう思いながら、兎に角、理由を聞かせてくれないと……話はそれからだよ、そうまた英二を促す。


ん……、もう一度、英二は小さく返事をして、ずっと俯いていた顔を上げると、空の先をじっと眺める。
それから数秒、瞳を閉じて拳を握り締めると、目を開けた英二はまるで覚悟を決めたような真剣な顔をして、僕の目をまっすぐに見つめた。


「明日の朝、オレ、ここで小宮山を……捨てる」










一瞬、英二がなにを言っているのか、理解できなかった。
____え?、思わず聞き返した僕に、もう一度、小宮山を捨てる、そう英二が繰り返す。


な、んで……、だって英二が小宮山さんをどれほど想っているかくらい、側でみていたら一目瞭然で……
小宮山さんも相変わらず英二のことしか見ていなくて、だから、僕はそんな2人を強がりじゃなく嬉しく見守っていた……


「なに言って……、そんな冗談、笑えないよ?」

「……いくらオレだって、冗談でこんなこと言えないって……」


本気だって、そう声を振り絞る英二は、本当に苦しそうで……
でもそれ以上に揺るぎない強い想いが感じられて……


「……いったい、何があったの?」

「別に……意味なんかない……」

「じゃあなんで?、ますます納得いかないな」


納得しない僕に英二はまた俯いて、それから、別に……、そうまた繰り返す。
小宮山さんを捨てる、なんて衝撃的なことを言い出したくせに、その此の期に及んでまだしっかり理由を言わない英二にイライラして……


「納得のいくように話してもらうよ、あんなに小宮山さんの事、大切にしてるくせに」


落ち着け、冷静に話を聞くんだ……、そう震える自分に言い聞かた。
そんな僕に英二はまたため息をつくと、それから重い口を開く。


「他に……もっと大切にしたい人が……できた……」


それは今にも消えてしまいそうな、そんな、か細い英二の声だった……

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