第75章 【ユウジントシテ】
そして向かった英二と小宮山さんの逢引の場所。
公園の東屋で立ち止まり、不二、あのさ……、そうずっと黙ったままの英二がやっと口を開いた。
「あの、さ……小宮山のこと……なんだけどさ……」
ああ、やっぱり……
案の定、話というのは小宮山さんのことで、うん、だと思ったよ、そう普段と変わらない笑顔を向けて答えると、英二は気まずそうに僕から視線を逸らした。
そしてまた言葉を詰まらせる。
本当に英二は普段の遠慮のない態度とは裏腹に、肝心な時はなかなかはっきりしないやつで……
「で、小宮山さんがどうしたの?」
しびれを切らして促した話の先……
聞けばきっともっと重苦しくなるのはわかってるけど、それでもどうせ聞くなら、さっさと終わらせてしまいたい。
……また僕に釘をさす?
あんな風に言ったけど、やっぱり毎日一緒に帰ってくるのが嫌になった?
相変わらず独占欲が強いのは、英二の生い立ちを思えば仕方がないことだけど、無自覚とはいえ自分のことは棚に上げて、小宮山さんを不安にさせているところは、僕だって面白くないよ?
『でも……私の場合、付き合えることになっただけで贅沢なのに……』
先日、英二と鳴海さんのことで不安から涙を流した小宮山さん……
その涙を拭いてあげることが出来なくて、伸ばしかけた手を断腸の想いで引っ込めた。
英二も小宮山さんも大切な友達だから……
だからずっと黙って見守っていたけれど……
いつまでも過去の鎖で締め付けて、小宮山さんを不安にさせ続けると言うのなら、僕だってそうそう黙っていられないよ……?
「ん、あのさ……明日の朝……ここに……来てくんない……?」
「朝は朝練があるの分かってるだろ?、今は放課後に学園祭の準備で練習時間が取れないんだ、朝の時間は貴重だよ」
「それは分かってるけどさ……明日だけ……頼むよ……」
重い口をやっと開いて話し出した英二の言葉は、僕の予想と違っていて、その言葉の真意がわからず、ただずっと節目がちで俯く英二の顔を見つめていた。