第74章 【ウチコメルモノ】
「小宮山さん……一体、何を考えてるの……?」
怪訝な顔をしている不二くんの顔をまっすぐに見つめる。
本当にいっぱいお世話になったな……
迷惑ばかりかけてきたような気もするけど……
「……だって、もう、私には、不二くんに優しくされる理由がないですもの……」
そう、もう私は英二くんに何もしてあげれない、何もしてもらえない……
いくら英二くんに私のことを頼むって言われたって言ったって、そこまで不二くんに迷惑かけられない。
目を見開いて私を見る不二くん……
その姿が滲んで見えなくなる。
ポロリとこぼれ落ちた涙……
ダメ、泣いちゃ、不二くんを困らせちゃう……
「すみません、大丈夫です、ただちょっと寂しくなっちゃって……」
英二くんの隣で笑う鳴海さんの笑顔……
思い出したくないのに、自分の意思とは関係なく何度も脳裏に浮かんで離れない……
きっとそのうち、私がしてもらったように英二くんは皆さんに鳴海さんを紹介して、それから一緒に楽しい時間を過ごすんだろうな……
仕方がないんだけど……それが当たり前なんだけど……
「不二くんにも皆さんにも、凄くよくしてもらって……、本当に楽しくて……、だから……何から何まで、鳴海さんに変わっちゃうんだな……って……」
不二くんが気にしないように精一杯の笑顔を作る。
そしてまたこぼれ落ちる涙……
あ、やだ、気にしないでくだいね?、そう涙を拭って不二くんの顔を見上げた。
「英二は関係ないよ……」
え……?、その瞬間、不二くんの声がすぐ耳元で聞こえた。
そして私を包み込む温もりに目を見開く……
不二くん……?、
突然のその行動と力強さに戸惑って、彼の胸の中で視線を泳がせる……
「あ、あの……」
「……英二は、関係ない」
そうもう一度、しっかりと繰り返す不二くんのその様子に、いつもの穏やかな彼は微塵も感じられなくて……
その全然違う雰囲気のこの状況に、どうして良いか分からなくて……