第74章 【ウチコメルモノ】
ああ、あのテニスの時のことを考えていたんだ……
うう、改めて思い出すと恥ずかしいな……
運動神経はいたって普通のはずだけど、それでも不二くんやテニス部の皆さんと比べたら、雲泥の差で……
「もしかして、運動神経、悪い子だな……なんて呆れました?」
「クスッ、むしろ可愛いなって思ってるけど?」
だから、不二くんはそう言う冗談、多すぎますってば!、そう言ってクスクス笑う不二くんを呆れ気味に眺めながら、そう言えば、私、まだちゃんとお礼、言ってなかったよね……?、なんて思い出す。
「あの……今日はありがとうございました、朝もですけど、テニスに誘ってくれて……本当に楽しかったです……」
「それは良かった……少しでも小宮山さんの気分転換になれたらって思ったんだ」
「はい、すっきりしました、それに皆さん、本当に優しくていい人たちで……」
本当にいい人たち……
嫌がらせにあった時も、空港で助けてくれた時も、今日も……
なんの関係もない私なんかのために、いつも一生懸命になってくれる……
すごく心地よい……英二くんの仲間たち……
そう、英二くんの、仲間……
もう私とは、なんの関係もない……
だから、私は皆さんと一緒にいられないんだよね……
「本当に……今まで、ありがとうございました……凄く……嬉しかったです……」
今まで……?、不二くんの笑顔が曇り怪訝な声が出る。
だって、不二くんにだって、これ以上、甘えられないもん……
もう、私、「英二くんを救う存在」じゃない……
不二くんの期待には応えられなかった……
ううん、一応、応えること、出来たのかな……?
不特定多数の女の人とってことは、なくなったんだもんね……
テニスには復帰させることは出来なかったけど……
そもそも、どうやって復帰させればいいのかなんて分からなかったし……
それはもう、鳴海さんが考えることだよね……