第74章 【ウチコメルモノ】
「本当に小宮山先輩、一緒に行かないんすか?」
「はい、母が待ってますので……誘ってくださって嬉しかったです」
青春台の駅前、ハンバーガーショップの前で桃城くんが残念そうな顔を見せてくれる。
皆さんの行きつけだというこのお店は、以前、英二くんとコンテナの上で食べたそれを買ったところ。
あの時みた夜景と星がすごくキレイで……
そのあと色々あって、でもその日、英二くんと両想いになれた……
ブンブンと慌てて大きく首を振り、落ち込む気持ちを置い払うと、そんな私に皆さんがびっくりした顔をする。
「あ、なんでもないんです、私はこれで……不二くんはどうぞ皆さんとご一緒……」
「しないよ、さ、帰ろう」
そう言って促し私の自宅方向へと一歩、歩みを進める不二くん……
不二くんの友達づきあいの邪魔をしてるみたいで申し訳ないな……、なんて思うんだけど、そんな私の考えは相変わらずお見通しのようで……
「今更、あいつらと一緒にいるより、小宮山さんと2人で帰った方がずっと楽しいからね」
「……そんなこと言ったら皆さんに悪いですよ?」
ペコリと頭を下げて苦笑いしている皆さんに挨拶すると、不二くんの隣に並んで歩き出す。
そんな私たちを眺めながら、大人しく不二先輩にしときゃいいんだ、そうポツリと海堂くんが呟いた気がした。
その海堂くんの言葉の意味がわからず振り返ると、海堂、そう不二くんの冷たい声が聞こえてビクッと身体が跳ねる。
驚いて不二くんの顔に視線を向けると、彼はとても冷たい目で海堂くんを見つめていた。
不二くん、怒ってる……どうして……?
はぁ……、そうため息をついた海堂くんが、別に言ったりしませんよ、そう言ってチッと舌打ちをする。
「あ、あの……?」
「小宮山さんは何も気にしなくていいよ?」
そう言って私に視線を戻した不二くんは、もういつもの優しい笑顔で……
なんだったんだろう……?、そう気になったけれど、とても聞ける雰囲気じゃなくて……
結局、よく分からないまま、もう一度皆さんに会釈をして、それから不二くんの隣を黙って歩き続けた。