第13章 【ムリトカクゴ】
「あのっ……私、せ、先輩のことが……す、好きなんですっ!」
言ったっ……!!
彼女と同じタイミングで大きく息を吸う。
心臓がうるさいくらいバクバクしてる。
泣きそうな顔で必死に英二くんの返事を待つ。
「ん、すんげーうれしい、けど……ごめんね?」
わかりました……そう言ってその女の子は泣きながら校舎の方へと走り去り、思わずホッと胸をなで下ろした。
私って性格悪いな……
茂みに隠れながら膝を抱えて座る。
女の子の泣き顔を見てホッとした自分に自己嫌悪する。
英二くんが彼女を作らないのはわかっていても、やっぱり告白されたとわかればその答えが気になるし、断ったと知れば嬉しいと思ってしまう。
フーッと大きくため息をついた。
「ほーんと、小宮山は好きだねぇ、覗き」
心臓がドキンとなって慌てて顔を上げると、いつの間にか英二くんが茂みの向こうから私を覗いて見下ろしていた。
「の、覗いていた訳じゃ……!」
焦る私に、だから立派な覗きだって、そう言って彼は笑い、それからごく自然に私の横に座った。
ただそれだけで胸は高鳴り、赤い顔を見られないようにフイッと横を向いて、後から来たのはそちらのほうですが?、そうぶっきらぼうに呟いた。
「いつもここで昼休憩してんの?」
そう寝転んだ英二くんの問いに、秘密です、なんて答え手元の本に視線を落とすと、心配しなくても邪魔しねーって、そう言って彼は目を閉じた。
「可愛い子でしたね……」
「そだね、オレ、すげー好み。」
私とは真逆の彼女が好みと知って胸がズキンと痛くなり、それを悟られないよう何でもない顔をする。
「彼女、作らないんですか?」
「オレ、こんなだし」
そう言って空を仰いだ彼の表情が一瞬だけ寂しそうな顔をした気がして、あの雨の日の公園を思い出し、私の胸を締め付けた。