第13章 【ムリトカクゴ】
お昼休みになるとカバンを持って席を立つ。
小宮山さん、どこで食べるの?トイレ?そう数人の女子が意地悪な顔で声を掛ける。
そんな彼女達に、違います、とだけ答え教室を後にする。
人気のない体育館裏にある、裏庭とも言えないほどの小さな空きスペース。
自販機や購買からも遠く離れているこの場所は、滅多に生徒の出入りもなく、ひとり静かな時間を満喫できる場所。
たいていのお昼休みはここでお弁当を食べて、あとは時間まで本を読むのが日課。
今日も午後の授業まで、のんびり英気を養おうと本を広げた。
「んー、待った?」
えっ?……英二くん……?
呼び出されてたっけ?慌てて携帯をチェックするもやっぱりメールは届いていない。
どういうこと?そう混乱しながら振り向くと、英二くんが声を掛けていたのは私ではなく、頬を染めて俯く可愛い女の子だった。
これって……告白だっ!
その雰囲気からすぐにそう理解した私は、慌てて身体を縮こませ、茂みの陰に身を潜める。
自分の告白ではないのに、心臓がバクバクして顔が赤くなる。
さっきまで誰もいなかったのに、いつの間に……?
いやいや、それよりコレって見ちゃダメじゃない……?
だからって動いたら絶対邪魔しちゃうよね……?
次から次と頭に浮かぶ疑問符に、混乱しすぎて上手く考えがまとまらない。
「この手紙くれたの、キミだよね?」
「は、はい……!」
やだ、話が進み出しちゃった、見ちゃダメ、聞いちゃダメ、そう思うのに心とは逆にその2人が気になって仕方がなくて、息を潜めてそっとその様子を見守った。
「き、菊丸先輩、あの……私……」
一年生かぁ……うわっ!凄くかわいい子……顔もさることながら、雰囲気も柔らかくて、ほんわかしてて……
多分、ああいう子が守ってあげたくなるタイプなんだろうな、そんな風に思った。
顔を真っ赤にしながら、ギューッとふるえる拳でスカートの裾を握る彼女のドキドキが私にも伝わってきて、思わず息を飲んで目を閉じた。