第73章 【モクゲキ】
美沙もお母さんも居てくれる……不二くんも朝迎えに来てくれた……
大丈夫……みんながいてくれるから、私、乗り越えられる……
乗り越えなくちゃ……
目にとまる青い空。
秋の薄い雲が風に吹かれて散っていく……
最後にまた少しだけ涙が滲むと、ほら、次!、そう美沙がまた次の一口を用意した。
「はい、これで最後!ごちそうさまでした」
結局、美沙のペースでお弁当を全部食べさせられて、慌ただしくでもお腹は満たされて……
お腹が満たされると自然と心も軽くなって、ほら、だから食は大切なの!、なんて美沙は得意げに笑った。
「さ、すっかり遅くなっちゃいましたけど、急いで教室に戻らなくちゃ……」
「はぁ?、あんた、これから授業に出るつもり?」
5時間目はもう残り少ない時間なのに、これから授業に出ると言う私に、美沙は呆れた顔をする。
だって私のせいで美沙までサボらせるわけにいかないし、やっぱり英二くんが気にしちゃうもの……
そんな思いを口にすると、英二?、そう今度は嫌悪感をあらわにした。
「なんでよ!英二なんて気にするの当たり前でしょ!?気にしなかったら殴るよ!」
「そんな……ダメですよ、英二くん、悪くないですから……」
「いや、どう考えたって悪いでしょ、あいつ何したか分かってんの!?」
「それは……でも謝ってくれましたから……」
ずっと自分が辛いばっかりだったから気が回らなかったけど、お腹が満たされて少しだけ心に余裕ができて……
そうすると、私にゴメンと謝った時の、英二くんのすごく辛そうな顔が頭を離れなくて……
きっと私を振るのに、いっぱい悩んでくれたんだと思うんだよね……
そりゃ、少しは気にして欲しいけど、いつまでも苦しんで欲しくない……
もう私のことは気にしないでって言いたいけれど、さすがに直接言うのはキツイな……
不二くんに伝えてもらおうかな……
「美沙も、英二くんにひどい態度取らないでくださいね……?」
そんな私の申し出に、どんだけ英二至上主義なのよ、そう言って美沙は大きなため息をついた。