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【テニプリ】闇菊【R18】

第73章 【モクゲキ】




キーン コーン カーン コーン


2度目の鐘の音が聞こえる。
それは午後の授業が始まったということ……


なのに、私はいまだにこの茂みの中から動けずにいた。


目の前で交わされたキス……
嬉しそうに頬を染める鳴海さんと、その後頭部を優しく撫でる英二くん……
しばらく寄り添った後、予鈴と同時に片付けをして、仲良く校舎へと戻って行った。


2人が立ち去った後、一気に全身の力が抜けてヘナヘナと座り込む。
私も行かなきゃ……早くしないと、授業が始まっちゃう……
そう思うんだけど……その通りなんだけど……


何度の脳裏で繰り返される先ほどの光景……
その度に涙が溢れて、どうしても立ち上がれなくて……


ダメ、泣き止まなくちゃ……早く教室に戻らなくちゃ……
英二くんが気にしちゃう……ゴメンって、また謝られちゃう……


必死に何度も涙を拭うんだけど、やっぱり止まらなくて……
胸はどうしようもなく痛んで、今にも張り裂けてしまいそうで……


「英二くん……苦しいよ……」


ポツリ、呟くと地面にうずくまって泣き続けた……









「璃音……!?」


遠くから聞こえた美沙の声に顔を上げる……


「どこ!?いるんでしょ!?」


美沙……心配して探しに来てくれたんだ……


「璃音……璃音っ……!!」


どんどんと近づいてくる私を呼ぶ声……
ガサガサと辺りの茂みを掻き分ける音……


美沙……美沙ぁ……
また溢れる涙がその勢いを増していく……


「美沙……こっち……」


フラフラする身体を起こし、なんとか声を振り絞ると、私に気がついた美沙が、璃音!!、そう大きい声で私の名前を呼んだ。
目の前の茂みを掻き分けて駆け寄ってくる美沙に、精一杯、両手を伸ばしてその温もりを求める。


「やっぱり、ひとりにするんじゃなかった……」


すぐにギュッと抱きしめてくれた美沙の腕の中はやっぱりとても暖かくて……
来てくれてありがとう……、そう呟いてまた涙を流した。

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