第73章 【モクゲキ】
キーン コーン カーン コーン
午後の授業開始まであと5分を知らせる鐘が鳴り響く。
璃音……遅いな……
いつも余程のことがない限り、予鈴と同時に席について次の授業の用意をしている璃音……
つまりまだ来ていないってことは、余程のことがあったってこと……!
璃音……!!
胸騒ぎが確信に変わると同時に慌てて教室から廊下へと飛び出した。
でも璃音が今どこにいるのか分からなくて……
あの子、自分のことあまり言わないからっ!、なんて今までの璃音との会話を思い出すけれど、やっぱり分からなくて……
そうだ、LINE!、そう思って何度か通話やメッセージを送ったけれど、ぜんぜん反応がなくて……
これは本当にマズイ気がする……
キョロキョロと辺りを見回しながら必死に璃音の姿を探す。
美沙?、もう始まるよ?、なんて声をかけてくれる友人を軽くあしらいながら見回した視線の先、弁当箱を片手にうつむき気味で歩いてくる英二の姿が見えた。
「英二っ!」
私の声に英二が顔を上げる。
ちょっと来て!、そう言ってその手を引っ張ると、な、何だよ?、なんて怪訝な顔をしている英二を廊下の隅まで連れて行く。
「璃音、どこ!?」
璃音の名前に英二がピクッと反応する。
それから、意味がわからない様子で、どこって?、そう問いかけた。
あーもう、話がわかんないやつだな!、そうイライラして髪を掻き乱す。
あんたなら分かるでしょ!?、璃音の行きそうな場所!!、そう思わず声が大きくなり慌てて声をひそめた。
「……小宮山、市川と一緒じゃないの?」
「1人になりたいって、あんたが教室を出て行った後、どっか行ったのよ!、もう授業始まるのに戻ってこないから心配で……、誰かさんに裏切られて憔悴しきってるからね!」
一気にまくし立てながら、しっかり嫌味を言ってやる。
璃音はなにも言わなくても、やっぱり私は納得いかない……!
でもそんな私の嫌味なんてもう英二はぜんぜん聞いていないようで、青い顔をしながら自分の口を手で覆っていた。