第73章 【モクゲキ】
市川side〜
信じられない……
なんでこんな事になってんのよ……?
今朝、欠伸をしながら登校してたら、璃音と不二くんが前を歩いていた。
いつも早い璃音と一緒になるなんて珍しいな、なんて思いながら挨拶したら、その前に英二と噂の鳴海さんが手を繋いで歩いているのが見えて……
どういう事!?って思って、カーッとなって大声をあげる私を璃音が必死に制止した。
いいのって、いいわけないじゃない!、そうぜんぜん納得出来なかったんだけど、大騒ぎする私のその行動が、余計に璃音を苦しめている事に気がついて……
璃音はすごく辛いくせに無理に笑っていて、ああ、どうしてこの子はこうなの……?、って胸が苦しくなった。
本当に自分より周りのことばっかりで……、そんなんだから付け入れられて利用されたり、妬みやストレスのはけ口の対象にされたりして……
それでもひたむきで、真面目に真っ直ぐに生きている……
今回のことだって、英二にも鳴海って子のこともぜんぜん悪く言わないで……
1人になりたいって言われたからそうしたけれど、本当に1人にして良かったのかな……?
大丈夫かな……泣いてないかな……?
「ねぇ、美沙、大丈夫?、具合悪いの……?」
ハッとして顔を上げると、心配そうな顔で覗き込んでいる友人達。
へ?、なんで?、そう答えると、だって、ほら、なんて彼女達はあまり減ってない私のお弁当箱を指差した。
「ああ……、うん、具合悪いってわけじゃないんだけど、ちょっと食欲なくて……」
その私の言葉に、えぇ!?、そう大袈裟な声を上げる友人達……
美沙が食欲ないなんて重病だよ!、なんて失礼なことを言ってくれる。
そこまで言うー?、なんて思いながら、目の前の弁当をがむしゃらに口に放り込んだ。
璃音……ちゃんとお昼食べたかな……?
朝もほとんど食べてこなかったであろう、その弱々しい姿を思い出し、またハァーっと深いため息をついた。