第13章 【ムリトカクゴ】
「おはよー、英二!」
「おー、おっはよーん!」
そう戸惑う英二くんは友人達の挨拶に、慌ててそちらに足を向ける。
そして私はまたいつものように俯いて、それから本に視線を落とす。
「英二、昨日のテレビ見た?チョコレーツでてたよ~!」
「マジ?オレ昨日早く寝ちゃって見逃したー!」
そう英二くんは頭抱え大袈裟に嘆く。
早く寝てはない癖に……どう見ても寝不足の顔をして笑う彼に、そう心の中でつぶやいた。
それから数日間は英二くんと何の接点もない生活を送った。
もちろん、クラスで用事があったときや委員会で一緒の時は言葉を交わすこともあったけど、それは以前からなにも変わらない事務的なものだった。
私が生理で出来ないとなると、本当、徹底しているな、そう思って少し心が痛んだ。
毎朝の挨拶に私が彼に笑顔を見せること以外にいつもと違っていることは、英二くんの教室での態度がいつも以上にハイテンションに見えること。
めいいっぱい笑って、大袈裟に驚いて、必要以上に飛び跳ねて……
その態度に皆が楽しそうにしていたけれど、私はなんか気になってちょっとだけ心配だった。
生理が終わると彼に教えた方がいいのかな?なんて思ってちょっと悩んだ。
でも私たちの関係において、『連絡は英二くんから』というのが暗黙の了解となっているし、第一、自分から誘っているようでそれは恥ずかしくて躊躇した。
それに余りにも接点がなさすぎて、もしかしたら彼はもう私のことなんてどうでも良いかもしれない、そう思ったりしたら凄く不安だった。
結局、一週間もしたら終わることくらい男子高校生なら誰でも知っているだろう、そう思ってあえて彼に報告はしないことにした。
もしまだ必要とされていたら、そのうちアクションがあるだろう、そう思いながら携帯のディスプレイを眺めて過ごした。
メールがないのはわかっていても、日に何度も携帯チェックする自分が滑稽でおかしかった。