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【テニプリ】闇菊【R18】

第73章 【モクゲキ】




その瞬間、英二くんがこちらを振り返った。
ハッとして慌ててまた茂みの影に身を隠す。
どうしよう……バレた……?
声に出してないのに……偶然……?


「先輩……どうしたんですか……?」

「あ、ううん、なんでもないよん」


バクバクしながら震える身体を抱きしめる私の耳に、2人のそんな会話が聞こえてくる。
恐る恐る顔を上げて、もう一度2人の様子を確認すると、もう英二くんはこちらを見ていなくて、良かった……バレてない……、そうホッと胸をなでおろした。


覗いた先の木の下、英二くんと鳴海さんが腰を下ろす。
2人、隣り合って座るその様子は私の時と同じ、友達とは違う心の距離……
バレなくて安心した胸はすぐに痛みを取り戻し、まるで張り裂けてしまいそう……


「わぁ、先輩のお弁当、予想通り、とっても美味しそう♪」

「芽衣子ちゃんのも美味しそうだよん?」

「だって先輩と一緒に食べれるんですもん、私、すごく頑張っちゃいました!」


やめて……聞きたくない……
必死に耳を塞いでもはっきり聞こえてくる声……
また茂みの中に縮こまって、キツく耳を塞ぎ続ける。


「そう言えば先輩、来月、誕生日ですよね?、今から一緒にお祝いするのが楽しみです♪」

「あ……うん、そだね……」


そう、英二くんの誕生日……11月28日……
プラネタリウムに行った時、一緒にお祝いするって約束した……
私じゃなきゃ嫌だって、英二くん、言ってくれたのに……


「先輩、手編みのマフラー……なんていりますか?、私、結構好きなんです、編み物」

「あー、うん、もちろん嬉しいよん?」


手編み……凄いな……
私なんて、究極の不器用だから、最初から挑戦する気にすらならないもん……


「それじゃ、ケーキも手作りしたいんですけど、イチゴとチョコ、どっちがいいですか?」

「んー……チョコレートかな〜?」


鳴海さん……あんなに可愛らしくて、女子力もすごく高い……
卵もまともに割れない私とは大違い……


はは……、口からそんな乾いた笑い声が溢れた……

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