第70章 【ヤサシイウソ】
「え……?、そうね……やっぱり有力なのは3年の森田さんと相沢さん、2年の氷川さん、そして1年生は鳴海さんってところかな……?」
ズキン、胸に重く響いた鳴海さんの名前……
やっぱり・・・鳴海さんもエントリーしているんだ……
あれだけ可愛ければ、当然だよね……
そこに名前が上がった人たちは、校内でも整った顔で有名で……
ここに小宮山さんが入ってくれれば、青学高等部のトップファイブ勢ぞろいなんだけど、なんて言って下さる実行委員さんの気持ちは大変ありがたいんだけど……
「みんな彼氏もイケメンだし、これは言わば、青学のベストカップルを決めるコンテストなんだよね〜」
話の雰囲気からして、鳴海さんのエスコート役は当然、英二くん……
英二くん、何も言ってなかったけど、どうなのかな……?
不安から胸の痛みがどんどん大きくなっていく……
「あの……やっぱり、なんと言われましても、私、本当に困るんです……」
動揺する心を悟られないように立ち上がり、用も無いのに学園祭の資料ファイルを手にするとパラパラと捲る。
すみません、もういいですか?、そう少し突き放すように落ち着いた声を出して、実行委員さんにチラッと視線を送る。
ふーっと大きなため息をついた彼女は、また来るから考えててね?、そう言って生徒会室を後にした。
何度来られても無駄なのに……
自分も大きなため息をついて資料をパタンと閉じる。
それは何度も打診を断ることへの憂鬱からくるものと、英二くんと鳴海さんのことに対する不安からくるもの。
本当に自分のネガティブさに嫌気がさす……
「小宮山さん、英二、エスコート役、ちゃんと断ってるみたいだよ。僕に説得するように、よく実行委員が頼みに来るから」
帰り道、いつものように自宅まで送ってもらう途中で不二くんがそう切り出す。
なにも言ってないのに、やっぱり不二くんには私の不安、お見通しなんだな……、なんて内心苦笑いをする。