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【テニプリ】闇菊【R18】

第12章 【ミカヅキノヨル】




「……今、帰ったのか?」


そーっと鍵を開け自宅に入ると、リビングで父と鉢合わせをする。
予想外の展開に、げっ、とタバコの残り香を気にして内心ヒヤヒヤする。


「あ、うん……大石んとこ行ってて……とーちゃん、帰ってたんだ?」

「ああ、取材が一段落したからな」


父は新聞記者。
仕事柄、どうしても不規則な生活の父は、何日も仕事で家に帰らないなんてしょっちゅうで、家族の多い我が家では尚更2人きりになることなんて珍しい。


思春期の父と子なんてどこの家でもそーだろうけど、かーちゃんと違ってどんな会話をしたらいいのかわからない。
ましてや今のこの状況、なかなか掛ける言葉が見つからない。


「おつかれ~!ほんじゃ、オレ、もー寝るねー?」


結局、なんの良い考えも浮かばずに、そんな風にたわいもない挨拶をして、それから逃げるようにリビングを後にする。


「……英二、出しなさい」


ギクッと肩を震わせ立ち止まると、何のことー?ととぼけて笑顔で振り返る。


それでも真剣な顔で手を差し出す父の無言のプレッシャーに負けて、フーッとため息をついて覚悟を決める。


そっと内ポケットからタバコとライターを取り出すと、とーちゃん、ごめん、そう謝りながらそれを父に手渡した。

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