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【テニプリ】闇菊【R18】

第12章 【ミカヅキノヨル】




「……またか?」


オレから受け取ったタバコを握りつぶし、父がそう問いかける。
父の言う「また」はタバコのことなんかじゃないのはわかってる。


「んなんじゃないって、ただの好奇心だよ……」


そう呟くと半笑いで目を伏せる。


「母さんが心配するぞ」

「分かってるって……」

「もう熊の大五郎って歳でもないのは分かるが、タバコはやめなさい」

「だからんなんじゃないってば!!」


思わず否定する声を荒げ、あっ、っと気まずい顔でとーちゃんを見る。
ホント、ゴメンって、そう顔の前で手を合わせると、もう二度と吸わないからさ、許してよ、そう苦笑いで頭を下げる。


「英二、苦しいなら以前のように……」

「とーちゃん、オレ、ほんと明日早いからさ!」


そう慌てて父の言葉を途中で打ち切り、急いで自室へとむかう。


昨年、一人暮らしを始めた兄のおかげで用意してもらった念願の1人部屋。
急いでドアを閉め、二段ベッドの代わりに置かれた普通のベッドに飛び込むと、熊の大五郎を勢いよく引き寄せる。


幼い頃より何度も繰り返す不安感と絶望感、そしてそれを紛らわす安定剤。


ほーんと、もうガキじゃないっての。
ちゃんと笑わないと家族が心配すんじゃん……?


息苦しさを感じながら震える身体で大五郎を抱きしめると、その丸いお腹には次々としょっぱい水痕が出来る。


いつもごめんな、大五郎……
でもすぐに消えるからさ、あっという間に乾くからさ……


そう心の中で大五郎に謝ると、オレは元気で明るい菊丸英二だよん、そう何度も何度も繰り返して呟いた。

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