第68章 【ムナサワギ】
「あの、申し訳ありません、私そろそろ……生徒会執行部の方に行かなきゃいけませんので……」
「あ、そっか、うん、また明日ねー!」
頑張ってね、そう笑顔で見送ってくれるクラスメイトたちにぺこりと頭を下げて、それから荷物を持って教室を後にする。
委員会じゃないのにこんな風に学校行事に関わるなんて、一学期までは考えられなかったな……
そんな今の状況を改めて嬉しく思いながら、生徒会室までの道のりを急ぐ。
♪〜
早足で進む廊下に響いた携帯の着信音。
その着信音と確認したディスプレイにザワザワと胸の奥が嫌な予感でざわめき出す……
「もしもし……?」
やっぱり……
私の受け答えになんの反応も示さないそれは、美沙が泊まりに来たあの時とすっかり同じで……
無言電話はこれで3回目……
最初とその数日後にもう一度、そして今回。
これってやっぱり間違いじゃないってことだよね……?
私だと分かってかけているのか、ただの偶然かは分からないけれど、どっちにしても気分の良いものではなくて……
でも、私だとわかってかけて来ているんだとしても、不二くんと付き合っていると噂がたってから、大きいものはなくても、これは嫌がらせかも?、なんてことは稀にあるから、今回もそれみたいなものだろうし……
気にしちゃダメだよね……
そう分かってはいてもやっぱり気持ちはどんよりして、通話終了のディスプレイを眺めながら、ふーっと大きくため息をつく。
とにかく、非通知拒否しとこ、そう思ってささっと携帯を操作した。
「……小宮山先輩」
急に後ろから掛けられた声にびっくりして振り返る。
この声……鳴海さん……?
その聞き覚えのある声はやっぱり鳴海さんで、彼女に話しかけられる理由なんて全く思いつかなくて、どうして……?、そう思わず顔が固まってしまう。
そんな私に、鳴海さんは相変わらず可愛らしい笑顔で微笑んでいた。