第68章 【ムナサワギ】
「はい、次に学園祭のクラス模擬店ですが、どなたか何か案はありますか?」
そんな慌しいある日のLHR、学園祭実行委員の司会進行で学園祭のクラス模擬店について話し合いが持たれた。
司会進行をしないLHRというものは、特に何か意見を出すつもりもない私にとって基本的に暇なもので、ぼんやりとみんなの動向を見守っている。
そして、こんな時になると普段の授業中と違って俄然張り切るのが英二くんで……
案の定、はいはい、はーい!、そう真っ先に身を乗り出して手を挙げていた。
「オレ、たこ焼き食べたい!たこ焼き屋に決定〜!!」
「おい、勝手に決定すんなよ!」
「別にいーじゃん!他になんかやりたいやついんのー?」
体育祭実行委員の時からそうだけど、英二くんのクラスをまとめる力というのは本当にすごいもので、彼中心に発揮されるクラスの団結力もまた相当で……
まさに鶴の一声、もうクラスの雰囲気はたこ焼き屋一色で、いまさら他の案なんて出る気配もなく、そのままクラス模擬店はたこ焼き屋に決定していた。
そういえば英二くん、去年も食べたかったからって理由で綿菓子屋だったって言ってたけど、一年前と全く思考は変わってないんだな……
まあ、私としても、去年と違ってメイド服を着せられる心配をしなくていいから、何の問題もないけれど……
「そんでもってねー、ただのたこ焼き屋じゃインパクトないじゃん?」
「まぁ……確かに……どうすんだよ?」
すっかり安心していたところに聞こえてきた英二くんの楽しそうな声……
これは、大抵、とんでもないことを言い出す前兆……
もう心は嫌な予感でいっぱいで、恐る恐る隣の英二くんを見上げると、ニィーっと思いっきり何かを企んでる笑顔の彼と目があった。
「小宮山さん、ネコ耳……なんかいいと思わない?、きっと彼氏が喜ぶよん?」
その邪気まみれの無邪気な笑みに、やられた!、そう思ったところで後の祭りで……
窓際、前から3番目の席で、美沙が肩を震わせながら、必死に笑いをこらえているのが見えた。