第68章 【ムナサワギ】
それからは普通の日常が戻ってきた。
英二くんはもうすっかりいつもの英二くんで、学校では楽しそうに過ごしていたし、放課後はバイトで忙しそうだった。
私もいつも通り賑やかな美沙の側で穏やかに学校生活を送っていたし、不二くんや他のみんなと生徒会執行部で頑張っていた。
あんなことがあったから、もう英二くんと2人でお弁当を食べることも無理になって、そうなるとゆっくり顔を合わせながら話す時間もなかなかなくて、でもセフレの頃と違って気持ちは満たされてたから、寂しさもあったけれどわりと平気で……
でも英二くんは男の子だから、やっぱり心だけじゃダメみたいで……
だけど学校でそんな行為をしないとなると、他にする場所なんかなくて……
英二くんのお家は大家族でいつも誰かいるし、私の家も最近は母の休日出勤がないらしく、たいていは自宅でのんびり過ごしていたから、英二くんを呼ぶこともできなくて……
私だって英二くんと寄り添いたいなって思うんだけど、だからと言って私たちは高校生だから、ラブホテルに行きたがる英二くんの要望には応えるわけにもいかなくて……
そもそも、英二くんが必死に働いて貯めたお金をそんなことに遣わせるのは申し訳なくて……
私がウンと言わなきゃ英二くんも無理強いはしないから、結局、我慢してもらうことになって、もうオレ限界ー、そう辛そうな声を聞くたびに、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
そんな中、今は10月上旬で、来たるべく来月の学園祭に向けて、生徒会執行部は慌ただしく動いていて、英二くんとのことも気がかりだったけど、やるべきことは沢山あって、そっちに気をとられるとすぐに集中しちゃって……
英二くんは英二くんで、バイトの先輩が急に辞めることになっちゃって、さらにシフトがキツくなったそうで、結局、お互い時間はないまま、それぞれの仕事を優先させる形になっていた。